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ホームインスペクションをやるリスクとは?

1.はじめに

ホームインスペクション(住宅診断)は、住宅の品質や状態を確認するための重要なプロセスです。新築でも中古住宅でも、多くの人が安心して住むために実施を検討します。しかし、すべてのホームインスペクションが成功するとは限りません。「やっておけばよかった」と後悔することもあれば、「やらなければよかった」と感じる場面もあるかもしれません。

この記事では、ホームインスペクションを行う際のリスクに焦点を当て、どのようにそのリスクを回避できるのかについて詳しく解説します。

2.ホームインスペクションを行う際に考えられるリスク

2-1. プロを選ばない場合のリスク

ホームインスペクションは一見すると簡単に見えるかもしれません。特にインターネットには「DIYでできる住宅診断」や「自分でチェックリストを使うだけでOK」といった情報が多くあります。しかし、素人が行うインスペクションには多くのリスクが潜んでいます

知識不足による見落としや誤解

建物には一見してわかりにくい問題が多くあります。例えば、新築では基礎の配筋やコンクリートの品質、中古住宅では床下のシロアリ被害や壁内部の腐食など、専門知識がなければ見逃しがちな部分が多いです。特に日本の高湿度な気候では、断熱材や構造材にカビが発生しやすく、放置すると健康被害につながることもあります。

また、インターネットや本の知識だけを頼りにすると、問題を過小評価したり、逆に必要以上に不安視して不必要な修繕を行う可能性もあります。さらに、耐震基準や断熱性能などの法律や規格の知識が不足していると、本来なら見逃してはいけない点に気づけないこともあります。これらの見落としは、後々多額の修繕費や安全性の低下につながるリスクがあります。このような理由から、プロの知識と経験に基づいた診断が欠かせないんです。

適切な報告書が作成されない

ホームインスペクションでは、報告書が診断結果を正確に記録し、購入や修繕の意思決定を支える重要な役割を果たします。しかし、知識や経験が不足している業者や素人が作成した報告書は、不十分な内容になる可能性があります。例えば、建物の重大な欠陥が正確に記載されていない、または専門的な用語の誤用や曖昧な表現で記録されると、購入者や売主間で誤解が生じることがあります。

また、不動産取引では報告書が交渉や法的な根拠として利用される場合のあるため、内容に欠陥があるとトラブルに発展しかねません。写真や数値データが不足している報告書では信頼性が低下し、後に必要な修繕費用を巡って争いが起こるなんてことも。こうした問題を防ぐためにも、専門的かつ詳細な報告書を作成できるプロの力が求められます。

法的に有効な証拠となりにくい

ホームインスペクションの報告書は、不動産取引や紛争解決の場で法的な証拠として活用されることがあります。しかし、内容が不十分だったり、作成者が信頼性の低い業者や資格を持たない個人であった場合、その報告書は法的に有効な証拠として認められない可能性があります。特に、建物の欠陥や劣化の指摘が不明確だったり、具体的な数値データや写真の記載が欠けている場合、売主や施工業者が責任を否認する根拠になりかねません。

また、報告書に誤りがあれば、後に損害賠償請求を行う際に購入者側が不利になるケースもあります。逆に、適切に作成された報告書があれば、売主に修繕を求めたり、取引条件の再交渉が可能になる場合があります。そのため、法的観点からも正確で信頼性の高い報告書を作成できる専門家への依頼が不可欠です。

2-2. 信頼性の低い業者を選んだ場合のリスク

プロに依頼する場合でも、業者選びを誤るとリスクが高まります。

悪質な業者による診断の手抜き

悪質な業者に依頼してしまうと、診断が適当に済まされ、重要な問題が見逃されるリスクがあります。例えば、外観だけを軽くチェックして内部の劣化や構造の問題を確認しない、または目視だけで十分な検査を行わないといったケースが報告されています。さらに、時間を節約するために点検箇所を省略する業者も存在し、その結果、報告書の内容が不完全になることがあります。こうした手抜き診断により購入者が安心しきってしまうと、後に多額の修繕費用が発生し、深刻なトラブルに発展しかねません。

誤った判断による購入後の不具合

不十分な診断や不正確な報告書が原因で、購入後に大きな不具合が発覚するリスクがあります。例えば、雨漏りやシロアリ被害、基礎のひび割れなどの重大な問題を見逃すと、修繕費用が数百万円単位に膨らむ可能性があります。さらに、業者が問題を過小評価したり、不適切なアドバイスを行った結果、購入者が安心して取引を進めてしまうケースも少なくありません。このような判断ミスは、居住後に住宅の安全性や快適性に影響を及ぼすだけでなく、精神的な負担やトラブルの原因にもなります。

追加コストが発生する

不十分な診断や不適切な業者選びによって、予期せぬ追加コストが発生することがあります。例えば、診断の精度が低いことで見逃された問題が後に判明し、修繕費が膨らむケースが典型的です。また、不完全な報告書や診断ミスにより、追加で再診断を依頼する必要が生じることもあります。さらに、修繕の緊急性が高まるほど、通常より高額な費用を請求されることもあります。このように、最初に適切な診断を行わないことで結果的に余計なコストがかかり、経済的な負担が大きくなるリスクがあります。

2-3. 十分な検査を行わない場合のリスク

ホームインスペクションは、建物全体をチェックすることが理想的ですが、費用や時間の問題から、一部の検査を省略することがあります。しかし、それには大きなリスクが伴います。

見落としが発生する可能性

ホームインスペクションでは、経験や専門知識が不足している場合に重大な問題を見落とすリスクがあります。例えば、壁や天井の小さな亀裂が構造上の大きなトラブルの前兆であることに気づけない場合や、床下や屋根裏といった目につきにくい箇所を適切に点検しないことで、シロアリ被害や湿気による腐食を見逃すことが考えられます。また、問題の初期段階では表面的に異常が分かりにくいため、専門的な機材や知識がないと判断が難しいことが多いです。こうした見落としは、後に修繕費の増加や安全性への影響を招く要因となります。

優先順位の判断ミス

建物の診断では、どの問題を優先的に対処するべきか正しく判断することが重要です。しかし、専門知識が不足していると、軽微な問題に過度にこだわり、重大な欠陥の対応を後回しにしてしまうリスクがあります。例えば、見た目の汚れや小さな傷を優先する一方で、雨漏りの兆候や基礎部分の劣化といった構造上の重大な問題を軽視するケースがあります。また、修繕にかかるコストや緊急性を誤って判断することで、最適な対策を見失い、後にさらに大きな費用や時間を要する結果を招くこともあります。

3.ホームインスペクションをリスクから守る方法

信頼できるプロを選ぶ

資格や実績を確認する

ホームインスペクションを依頼する際は、業者の資格や実績を事前に確認することが非常に重要です。資格を有していない業者や経験の浅い業者に依頼すると、診断の精度が低くなるリスクがあります。例えば、建築士の資格を持っているかどうか、これまでにどのような案件を手がけたのかを確認することで、業者の信頼性を見極めることができます。また、口コミやレビューを参考にするのも有効です。過去の実績が豊富で具体的な評価が高い業者であれば、安心して依頼でき、正確な診断結果を得る可能性が高まります。

第三者性を重視する

ホームインスペクションを行う際は、第三者性を確保できる業者に依頼することが重要です。施工会社や売主と利害関係がある業者では、診断結果が偏る可能性があります。例えば、問題を軽微に見せたり、不具合を隠すような報告が行われるケースもあります。一方、完全な第三者として中立的な立場で診断を行う業者であれば、建物の状態を正確に評価し、買主や建築主にとって有益なアドバイスを提供してくれます。第三者性を重視することで、トラブルを未然に防ぎ、安心して取引や建築計画を進めることができます。

検査内容を事前に確認する

ホームインスペクションを依頼する際には、業者が提供する検査内容を事前に詳しく確認することが大切です。業者によっては、目視による簡易的なチェックのみを行い、重要な箇所を十分に検査しない場合があります。例えば、基礎や屋根及び外壁等の劣化状況、雨漏りの兆候など、建物の安全性に直結する部分をカバーしているかどうかを確認する必要があります。また、検査時に使用する機器や検査方法についても具体的に説明を求めることで、業者の信頼性を測ることができます。明確な説明がない業者は避けるべきでしょう。

費用をケチらない

ホームインスペクションの費用を抑えようとして安価な業者や簡易的な診断プランを選ぶと、結果的に大きなリスクを抱えることになります。安価なサービスでは、検査項目が限定的であったり、経験や資格のない担当者による不十分な診断が行われる場合があります。その結果、建物の重大な問題が見逃され、後に多額の修繕費が発生するリスクが高まります。一方で、信頼できるプロに適正な費用を支払うことで、安心感と精度の高い診断を得ることができ、長期的にはコストパフォーマンスが良い選択となります。

4.実例:リスクを回避した成功例と回避しなかった失敗例

中古住宅編

成功例:購入前にホームインスペクションを実施したケース

中古住宅の購入を検討していたある夫婦は、見た目は良好で価格も手頃な物件を見つけました。しかし、購入前にホームインスペクションを依頼したところ、屋根裏の断熱材が一部ないことや、外壁の一部に雨漏りの痕跡があることが判明。特に基礎部分に幅0.8mmのひび割れが見つかり、構造への影響が懸念されました。インスペクションの報告書を基に、売主に修繕を依頼した上で購入を進めることができました。結果的に大きなトラブルを回避し、安心して中古住宅での新生活を始めることができました。

失敗例:ホームインスペクションを行わなかったケース

一方、別の家族は中古住宅の購入を急ぎ、内覧だけで決めてしまいました。引っ越し後、床が不自然に沈む感覚に気づき、業者に調査を依頼したところ、床下の束(床を支える部材)が腐食していたことが判明しました。さらに、外壁の一部に隠れていたシロアリ被害が進行しており、大規模な修繕が必要に。これらの問題に対処するため、予定外の数百万円の出費が発生。家族は「購入前に専門家の診断を受けていれば」と大きな後悔を抱える結果となりました。

教訓:中古住宅は経年劣化や見えない箇所の不具合が隠れている可能性が高いため、購入前にホームインスペクションを行うことが非常に重要です。少しの費用と時間をかけることで、後々の大きな出費やトラブルを未然に防ぎ、安心して中古住宅を選ぶことができます。

建売住宅編

成功例:事前にホームインスペクションを実施したケース

ある家族が購入を検討していた建売住宅は、一見して新築の美しい外観と内装を備え、価格も魅力的でした。しかし、購入前に第三者のホームインスペクションを依頼したところ、キッチンの水栓接続箇所で漏水が判明しました。さらに、外壁部分に未塗装箇所があり、将来的に劣化の進行度合いが早まる可能性が指摘されました。この結果、家族は売主に修繕を依頼し、その費用を購入価格から差し引いてもらう形で契約を締結しました。これにより、購入後の不安を解消し、安心して新生活を始めることができました。

失敗例:ホームインスペクションを行わなかったケース

一方、別の家族は建売住宅を内覧のみで即決し、ホームインスペクションを行いませんでした。引っ越し後、雨の多い季節になってから天井にシミができ、雨漏りが発覚。調査の結果、屋根材の施工不良が原因と判明しましたが、売主の保証期間が過ぎており、修繕費用を自己負担する羽目に。さらに、床下の換気不良による湿気が原因で一部の構造材にカビが付着し腐食しかかっており、こちらの修繕にも多額の費用がかかりました。事前にホームインスペクションを行っていれば、これらの問題を防ぐことができた可能性が高い事例です。

教訓:建売住宅でも新築だからと油断せず、第三者によるホームインスペクションを実施することで、隠れたリスクを見逃さず、購入後の不安や出費を最小限に抑えることが重要です。

注文住宅編

成功例:建築中にホームインスペクションを実施したケース

ある夫婦が初めての注文住宅を建てる際、工事の各段階でホームインスペクションを依頼しました。基礎配筋検査では床の鉄筋のかぶりが不足している箇所を発見し、早急に施工業者に是正を求めました。また、外壁防水検査では一部の防水シートの施工が不完全であることが判明し、修正を依頼。このような点検と是正を繰り返した結果、住宅の耐久性や防水性能が向上し、完成後に不具合が発生するリスクを最小限に抑えることができました。家族は安心して新居での生活をスタートでき、満足度の高い注文住宅が完成しました。

失敗例:ホームインスペクションを省略したケース

一方、別の家族は信頼している工務店に全てを任せ、ホームインスペクションを実施しませんでした。完成後しばらくして、雨漏りが発生。調査を依頼したところ、外壁の防水施工が不十分だったことが原因と判明しました。また、床下点検口を開けて確認した際、湿気によるカビが発生しており、基礎部分の防湿対策が適切に行われていなかったことも判明。これらの修繕には数百万円の追加費用がかかり、理想の家づくりが大きな経済的負担を伴う結果となってしまいました。

教訓:注文住宅では、自由設計の魅力と引き換えに、施工ミスが起きるリスクが高まります。建築中の各段階でホームインスペクションを実施することで、見えない部分の不具合を未然に防ぎ、安心できる住宅を手に入れることができます。信頼する業者でも第三者の目を入れることで、さらに安全性や完成度を高めることが可能です。

5.まとめ

ホームインスペクションにはリスクが伴うことを理解したうえで、適切な対応をすることが重要です。プロに頼る際は、信頼できる業者を選び、必要な検査を確実に行うことでリスクを最小限に抑えられます。また、安価なサービスやDIYに頼らず、確実な結果を得るための投資と考えるべきです。

「リスクを避ける第一歩は、信頼の置けるプロを選ぶこと」ホームインスペクションを成功させるために、ぜひ適切な判断をしてください。

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