新築の建売住宅の床下に進入すると写真のような事象に遭遇することがあります。
新築なのにもうひび割れ?と思われたことでしょう。こうしたひび割れはどのような原因で発生し、将来住宅にどんな影響をあたえるのか考えてみました。
住宅の基礎、「べた基礎」は、スラブと呼ばれる“床”と立上りと呼ばれる“壁”から構成されています。建物が地盤と接している部分が広くなるため、昔ながらの布基礎に比べると建物の荷重が床全体に分散され安定した基礎になります。
特に軟弱地盤や建物の自重が重い場合にベタ基礎を採用することは必須となるでしょう。構造の安定性の高さから木造住宅で徐々に増えており、今では木造住宅はべた基礎が主流となりました。
さて、この床部分に発生したひび割れは何が原因だったのでしょうか。主に次の4つの要因が考えられます。
地盤が沈下した・・・スラブコンクリートの場合、長期にわたる圧密沈下や、スラブコンクリートの自重による沈下、埋め戻し土の転圧不足などにより、床スラブがたわんで不同沈下が発生しひび割れが生じることがある。
養生不良・・・コンクリートを打った後は、十分な水分を与えないといけません。それは、コンクリート内部の水が奪われることにより収縮が発生するからです。防湿フィルムや養生マットなど保湿することが重要なのですが、こした湿潤養生をしっかり行なっていないとひび割れが発生しやすくなります。
かぶり不足・・・かぶりとは、鉄筋コンクリートの構造体において、鉄筋表面からコンクリートの表面までの距離をいいます。スラブコンクリートにおいてかぶりは、建築基準法上、土に接する側は6cm、その反対側(床下の空間側)は4cm確保しなければなりません。その床下の空間側のかぶりが4cmに満たなかったことが原因で発生する場合もあります。また使用されていた鉄筋に著しい錆びが付着していたときにも、錆びの進行によりひび割れが発生しやすくなるため使用する鉄筋の状態を確認することも必要です。これが原因かどうかを確かめるにはコンクリートを一部壊してみないとわからないため非常にやっかいです。
初期収縮・乾燥収縮・・・コンクリートを打った後は湿潤状態を保たなければなりません。しかし、打った日の気温や風など気象条件により、コンクリート表面の水分が急激に奪われてしまうとコンクリ―トが収縮しひび割れが発生します。また固まった後のコンクリートは、コンクリート内部の水分がセメントとの反応により乾燥収縮します。
今回発見したこのひび割れは、ひび割れ幅が0.5mm以上でまた完成間もないという状況から埋め戻し土の転圧不足が原因の可能性が高いこと、また他の原因が複合的に関係している可能性もあることを依頼者にお伝えしました。
スラブコンクリートは、ひび割れが発生すると美観性を損なうばかりか、床下の湿気がコンクリート内に浸入することで鉄筋を錆びさせ、基礎の耐久性を低下させてしまうため細心の注意をはらって施工しなければならないのです。